「もう少し、問題意識を持って仕事をしてほしいんだけどな……」
管理する立場になってから、そんなことを思ったことが何度もありました。
言われた仕事はやる。
期限も、それなりに守る。
けれど、
「このままでいいのだろうか」
「もっと良いやり方はないだろうか」
「なぜ、この仕事をやっているのだろう」
そんな一歩踏み込んだ言葉が、なかなか出てこない。
改善活動に取り組んでいた頃の私は、そんな姿を見ると、つい「本人の問題意識が足りない」と考えていたように思います。
今回、昔のマネジメント資料を読み返していて、ふと考えさせられるところがありました。
たとえば、仕事では、
「言われたことはやります」
という感じで、自分から改善案を出すことの少ない若手がいたとします。
ところが休憩時間になると、自分の車の話を楽しそうにしている。
燃費を少しでも良くするために走り方を変え、数字を記録し、部品を替えたらどう変わったかまで自分で調べている。
「前回はこうだったから、今度はこれを試してみようと思うんです」
そんな話を聞いていると、こちらが驚くほどよく考えています。
もしこんな若手を見たら、
「それだけ考えられるなら、仕事でも考えてくれればいいのに」
管理者としては、ついそう思ってしまうのではないでしょうか。
以前の私なら、そう考えていたと思います。
けれど今になって考えてみると、少し違う見方もできるような気がします。
この若手には、本当に「問題意識がない」のでしょうか。
車のことなら、自分で目標を決めています。
今の状態を調べています。
どうすれば良くなるか考えています。
試して、結果を見て、また次の方法を考えています。
考えてみれば、立派な改善です。
PDCAという言葉を知らなくても、自然にPDCAを回しています。
だとすれば、考える力がないわけではありません。
もしかすると仕事では、
「何を目指して、何を問題として見ればいいのか」
それが、本人の中ではっきりしていないだけなのかもしれません。
そう考えると、
「もっと問題意識を持て」
という言葉の前に、管理者としてやることがあったのではないか。
昔の資料を読み返しながら、私はそんなことを考えました。
「問題意識を持て」では、何を見ればいいか分からない

若い人に、
「もっと問題意識を持って仕事をしよう」
と言ったとしても、言われた本人は困るかもしれません。
問題意識という言葉は、分かっているようで、意外と曖昧だからです。
私自身も現場にいた頃、
「もっと考えてほしい」
「もっと改善できないか」
と思ったことは何度もあります。
でも今思えば、その前に一緒に考えることがあったのではないでしょうか。
「私たちは、何を目指しているのか」
ということです。
問題は「現状」と「目指す姿」の間にある
昔の資料には、問題について興味深いことが書かれていました。
問題とは、今の状態と「こうしたい」という目標状態とのギャップである、という考え方です。
私はここを読み返して、
「なるほどな」
と思いました。
目指す姿がなければ、同じ現場を見ても、何が問題なのか分かりません。
たとえば製造現場の床に、ほんの少し油が落ちていたとします。
何となく歩いていれば、
「ちょっと汚れているな」
で通り過ぎるかもしれません。
しかし、
「ゼロ災害を目指す」
「誰も危険な思いをしない職場にする」
という目指す姿が共有されていれば、
「あれは危ないぞ」
と足が止まります。
同じ油です。
違うのは、見る側が持っている「目指す姿」です。
5Sでも似た経験がありました。
「きれいにしよう」
だけでは、なかなか続きません。
なぜ整理するのか。
なぜ整頓するのか。
どんな現場にしたいのか。
そこが分かってくると、
「これはここに置かないほうがいいな」
「この表示では新人には分かりにくいな」
と、小さな違和感が目に入ってきます。
私は、これが問題意識の入口なのではないかと思っています。
車のことなら、なぜ自分で考えられるのだろう

先ほどの車好きの若手に戻ってみます。
燃費を良くしたい。
もう少し乗りやすくしたい。
自分の車をもっと良い状態にしたい。
そこには本人なりの「こうしたい」があります。
だから、
「今はどうなっている?」
「何が原因だろう?」
「これを変えたらどうなる?」
という問いが自然に生まれます。
そして試してみる。
結果を見る。
うまくいかなければ、また考える。
これは改善活動そのものです。
では、なぜ仕事になると、その力が見えなくなるのでしょう。
私は以前なら、
「仕事への意欲が足りないのかな」
と考えてしまったかもしれません。
でも、それだけではなかったのかもしれません。
仕事の目的と、自分の仕事とのつながりが見えていなかった。
そう考えることもできます。
「もっと作れ」だけでは、問題は見えてこない
製造現場では、
「もっと作ってほしい」
「生産数を上げてほしい」
という要求が出ることがあります。
私自身も、そういう状況を何度も経験しました。
でも「もっと作る」だけを考えると、最初に浮かびやすいのは、
残業を増やす。
人を増やす。
もっと速く作業する。
といった方法です。
私は、それにはずっと違和感がありました。
人に無理をさせる前に、仕事の流れを変えられないだろうか。
そこで現場を見ていくと、段取り替えで仕事が止まっていることが見えてきました。
必要な部品や工具を事前にそろえるキッティングを取り入れ、段取り時間を短くする。
結果として、残業を増やさずに生産数を伸ばすことができました。
あのとき私が見ていたのは、人の頑張りではなく仕事の流れでした。
TOC(制約理論)でいうボトルネックを見る考え方にも通じます。
「残業を増やさず、生産数を増やす」
という目指す姿があったから、
「では、どこが流れを止めているのだろう」
という問題が見えてきたのだと思います。
目的が変われば、見える問題も変わる。
今振り返ると、それも問題意識だったのでしょう。
部下に答えを教えすぎていなかっただろうか
管理者になると、経験が増えます。
部下が悩んでいるのを見ると、
「そこはこうすればいい」
と、つい言いたくなります。
私にも覚えがあります。
こちらには答えが見えているので、そのほうが早いのです。
でも、それを繰り返しているとどうなるでしょう。
何か起きたら上司に聞く。
上司が答えを出す。
また問題が起きたら聞く。
仕事は進むかもしれません。
でも、本人が考える機会を知らず知らずのうちに減らしてしまう可能性があります。
そこで、答える前に一つ問いかけてみる。
「君はどう思う?」
「本当は、どういう状態にしたい?」
「今と何が違う?」
「一番邪魔をしているのは何だと思う?」
すぐに答えが返ってこなくてもいいのだと思います。
沈黙があってもいい。
その時間に、本人は考えているのかもしれません。
人を育てるというと、何かを教えなければいけないと思いがちです。
でも実際には、
考える力を育てること。
それも人材育成なのではないでしょうか。
問題意識を「個人の能力」にしない
今回の資料を読み返して、私が最も考えさせられたのはここでした。
問題意識を、
「あの人は高い」
「あの人は低い」
だけで片づけないことです。
問題意識が生まれる背景には、
目的意識。
役割意識。
当事者意識。
そして仕事についての知識や経験があります。
チームが何を目指しているのか。
そのために、自分は何をするのか。
なぜ自分がやるのか。
そこがつながってくると、
「これは自分には関係ない」
だった仕事が、
「自分たちの問題だ」
に変わってくることがあります。
小さな違和感を言える職場にする

そして、もう一つ大切なのが、気づいたことを言える場所です。
「最近、この設備よく止まりますね」
「この作業、ちょっとやりにくいです」
「ここ、間違えやすいですよね」
現場には、そんな小さな言葉がたくさんあります。
それを、
「昔からそうだから」
「そんな細かいことはいいよ」
と流してしまえば、そこで終わります。
反対に、
「どこがやりにくい?」
「もう少し聞かせて」
と拾えば、改善の入口になります。
会議だけではありません。
朝礼でも、立ち話でも、休憩中の会話でもいい。
一人ひとりが感じている小さな違和感を見えるようにする。
そして、みんなで考える。
これも「見える化」なのだと思います。
一人の問題意識を、チームの問題意識へ変えていく。
その場をつくることも、管理者の大切な仕事なのかもしれません。
まとめ
若い頃の私は、
「もっと問題意識を持ってほしい」
と思うと、その人自身を見ていました。
やる気はあるのか。
自分で考えているのか。
当事者意識はあるのか。
もちろん、それも大切です。
けれど今は、もう一つ見るところがあると思っています。
その人に、目指す姿が見えているだろうか。
そして、
自分の仕事と、その目的がつながっているだろうか。
問題意識は、本人だけの問題ではないのかもしれません。
目的を共有する。
役割を一緒に考える。
小さな違和感を拾う。
そして、すぐ答えを教えるのではなく、問いかけてみる。
そんな積み重ねの中で、
「これ、おかしくないですか?」
という部下の一言が増えていく。
私は、そんな職場が強い現場なのだと思います。
おわりに
もし明日、部下を見ながら、
「もう少し問題意識を持ってくれたらな……」
と思うことがあったら、少しだけ問いを変えてみてはいかがでしょう。
「なぜ、この人は気づかないのだろう」
ではなく、
「この人には、何を目指しているかが見えているだろうか」
と。
そして、もう一つ。
「私は答えを教えすぎていないだろうか」
と。
私自身、現場では迷いながらやってきました。
今だから分かることもたくさんあります。
だから、いきなり大きく変える必要はないと思っています。
明日の朝礼で一度だけ、
「みんなは、どう思う?」
と聞いてみる。
そして、返ってきた言葉を少しだけ待ってみる。
そこから始まる改善もあるのかもしれません。
現場って、本当に奥が深いですね。
🍀 今日のひとこと
問題意識を求める前に、何を目指しているのかを一緒に考えてみる。
📖 今日の学び
問題意識は、本人のやる気だけから生まれるものではありません。
目的が見え、役割が分かり、「これは自分の仕事だ」と思えたとき、今まで見えなかった問題が見え始めます。
管理者にできることは、答えを教えることより、自分で考えられる「問い」と「場」をつくることなのかもしれません。



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