「もっと問題意識を持て」と言う前に|部下が自分で考え始める職場とは

現場で学んだこと

「もう少し、問題意識を持って仕事をしてほしいんだけどな……」

管理する立場になってから、そんなことを思ったことが何度もありました。

言われた仕事はやる。

でも、「もっと良いやり方はないだろうか」「ここはおかしくないだろうか」と、自分から一歩踏み込んで考えてほしい。

改善活動に取り組んでいた私は、そんな姿を見ると、つい「本人の問題意識が足りない」と考えていました。

でも、本当にそうだったのでしょうか。

今振り返ると、問題意識を本人だけの問題にしていたところが、私にもあったように思います。

仕事では見えなかった「考える力」

若手社員の中に、自分の興味のあることについては、とてもよく知っている人がいました。

たとえば車です。

仕事をしているときとは少し違って、自分が興味を持っていることについては、自分から知識を取り込もうとしていることがよく分かりました。

知らないことがあれば調べる。

もっと知りたいと思えば、また自分から情報を集める。

誰かから「勉強しなさい」と言われているわけではありません。

自分が興味を持っているから、自分で考え、自分で知識を取り込んでいく。

そんな姿を見ていると、

「それが自分で考えられるなら、仕事でも考えてくれればいいのに」

当時の私は、そんなふうに思うこともありました。

でも今になって考えると、少し違う見方ができます。

その人に考える力がなかったわけではありません。

仕事の中では、自分から考えるための「何か」が足りなかったのかもしれません。

問題は「目指す姿」があるから見えてくる

私は改善活動の中で、問題を見るときに「今どうなっているか」だけではなく、「どういう状態にしたいのか」を考えていました。

目指す姿と現状に差があれば、そこに問題があります。

これは製造現場にいると、いろいろなところで感じます。

たとえば床に小さなゴミが落ちている。

テープの破片かもしれませんし、作業の中で出たちょっとしたゴミかもしれません。

気にしなければ、そのまま通り過ぎてしまう程度のものです。

でも、

「きれいで安全な現場にしたい」

と思って現場を見ると、その小さなゴミが気になります。

「なぜ、ここに落ちているんだろう」

「どこから出たんだろう」

「また同じことが起きないだろうか」

同じものを見ていても、目指している状態によって見え方が変わります。

当時の私は、こういうところから問題を見つけていました。

「もっと作る」と言われたとき、どこを見るか

製造現場では、生産数をもっと増やしたいという課題に向き合うこともありました。

単純に考えれば、人を増やす、残業を増やす、もっと速く作業するという方法もあります。

でも私は、人に負担をかける前に、仕事の流れの中に改善できるところはないだろうかと考えていました。

そこで見ていたものの一つが、工程準備です。

仕事を始めるための準備に時間がかかれば、その分、流れは止まります。

「だったら、必要なものを事前に準備しておけばどうだろう」

工程準備を見直し、必要なものをあらかじめそろえることで、段取りにかかる時間を減らしていきました。

準備の仕方を変える。

止まっている時間が減る。

仕事の流れが変わる。

そして結果を見て、また次を考える。

当時の私は、こうやって改善を進めていました。

最初から、

「人にもっと頑張ってもらおう」

と考えていたのではありません。

「もっと生産できる状態にしたい」

という目指す姿があって、

「では、今はどこで流れが止まっているのか」

と現場を見ていました。

「問題意識を持て」だけでは難しい

そう考えると、部下に、

「もっと問題意識を持って仕事をしてほしい」

と言うだけでは、少し難しかったのかもしれません。

本人からすれば、

「では、何を問題として見ればいいのですか」

ということになります。

私自身、管理者として「もっと考えてほしい」と思ったことは何度もあります。

でも、その前に、

「私たちは何を目指しているのか」

「今、どういう状態なのか」

「その中で、あなたの仕事は何につながっているのか」

そこを一緒に考える必要があったのではないかと、今は思います。

当時の私は「自分の仕事に旗を立てる」という言葉も使っていました。

自分は何を目指すのか。

そのために何をするのか。

そこが少し見えてくると、

「このやり方でいいのかな」

「ここは変えられないかな」

そんな疑問も出てきます。

答えを教えることが、考える機会を減らすこともある

もう一つ、管理者になってから私自身が気をつけなければいけないと思ったことがあります。

経験が増えるほど、答えが見えてしまうことです。

部下が困っていると、

「そこはこうすればいい」

と言いたくなります。

その方が早いのです。

忙しいときなら、なおさらです。

でも、毎回答えを渡していると、部下は何かあるたびに上司に答えを求めるようになるかもしれません。

そうなったとき、

「どうして自分で考えないんだ」

と思っても、もしかすると、その環境をつくった一人は自分なのかもしれません。

だから、すぐに答えを言う前に、本人がどう考えているのかを聞いてみる。

私は、そんなことも意識するようになりました。

話せるようになれば、

「実はここがやりにくいです」

「ここがよく分からないんです」

という小さな違和感も出てくるかもしれません。

その言葉を拾えるかどうか。

そこにも、問題を見つけるきっかけがあるように思います。

問題意識を「その人の能力」だけにしない

以前の私は、

「あの人は問題意識が高い」

「あの人は問題意識が低い」

と、人を見ていたところがありました。

もちろん、人によって違いはあると思います。

でも、車など自分の興味のあることなら、自分からどんどん知識を取り込んでいく若手の姿を見ていると、それだけでは説明できません。

考える力がないわけではない。

もしかすると、その力が仕事の中で出てくるための「何か」が足りなかったのかもしれません。

何を目指しているのか。

自分の仕事が何につながっているのか。

そして、気づいたことを話しても大丈夫なのか。

そんなことも関係していたのではないかと、今は思います。

管理者として、

「もっと問題意識を持ってほしい」

と思ったとき、相手だけを見るのではなく、自分たちの職場も見る。

「なぜ、この人は気づかないんだろう」

そう思ったとき、

「この人には、何を目指しているのかが見えているだろうか」

と考えてみる。

そしてもう一つ、

「私は、考える前に答えを教えていないだろうか」

と自分にも問いかけてみる。

私は30年以上の仕事を振り返って、そんな見方をするようになりました。

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