叱ると萎縮する若手への伝え方|現場で考えた、注意した後の関わり方

現場で学んだこと

注意をしたつもりでも、相手が黙ってしまう。その後の仕事にも、どこか消極的になってしまう。そんな若手がいました。

こちらとしては、間違っているところを直してほしいだけです。仕事ができるようになってほしいし、同じ失敗で困ってほしくない。そんな思いで伝えていました。

ところが、話をした後の表情を見ると、どうも伝わり方が違う。

「これまで、あまり注意をされたことがなかったのかな」

そんなふうに心配になったのを覚えています。ただ、本人がどう受け止めていたのかは、表情だけでは分かりません。こちらが勝手にそう考えていた部分もあったと思います。

同じ言い方でも、受け止め方は人によって違います。注意されたことをすぐ次の行動につなげる人もいれば、その言葉が気になって、動けなくなってしまう人もいました。

それでも、仕事で守るべきことは理解してもらわないと困ります。

「叱る」以前の、ただの注意の段階でこうなってしまうなら、こちらも伝え方を考える必要がある。管理職をしている間、何度もそう感じました。

行動を注意したつもりでも、本人には違って聞こえる

注意するとき、私が伝えたかったのは「この行動を直してほしい」ということでした。

ところが、受け取る側には「自分は仕事ができない」「期待されていない」と聞こえてしまうこともあったように思います。

一つのミスについて話しているのに、本人は自分全体を否定されたように感じている。そこに、伝える側と受け取る側のずれがありました。

経験を重ねれば、失敗したところと、できているところを分けて考えられるようになるのかもしれません。でも、まだ仕事に自信がない若手にとっては、それも簡単ではなかったのでしょう。

こちらの言葉が短すぎたことも、強く聞こえたこともあったと思います。

忙しいと、何が問題なのかを十分に説明しないまま、結論だけを伝えてしまう。自分には当たり前のことでも、相手には、その理由が分からないまま残っていたのかもしれません。

黙って聞いているからといって、理解しているとは限らない。そのことは、忘れないようにしたいと思っていました。

注意した後、仕事の動きが小さくなる

萎縮してしまうと、次からは注意されないことが優先になっていきます。

分からないことがあっても、聞きに来ない。自分で判断できそうなことでも、確認を取るまで動かない。ミスをしても、報告が遅れる。中には、隠してしまう人もいました。

こちらは仕事をよくするために注意したのに、かえって状況が見えにくくなってしまう。これは、望んでいた結果とは逆でした。

現場では、分からないことや異常があったときに、早く知らせてもらう必要があります。小さな問題のうちに分かれば対応できても、時間がたってからでは、影響が広がることもあるからです。

だから、ミスそのものだけでなく、その後に相談や報告ができる関係も大切でした。

注意した直後の返事だけで、話が終わったと思わない。その後、どんなふうに仕事をしているかまで見る必要があると感じていました。

萎縮しているように見えたときのサイン

現場で見ていて、気になった変化がいくつかありました。

  • 質問や相談の回数が、以前より減る
  • 「大丈夫です」と答えるが、作業を見ると迷っている
  • 自分で判断せず、細かいことまで確認するようになる
  • ミスや困りごとの報告が遅くなる

もちろん、こうした変化がすべて萎縮によるものとは限りません。仕事が難しくなったのかもしれないし、説明が足りなかった可能性もあります。

ただ、注意した後に変化が出ていたら、自分の伝え方も振り返る必要があると思っていました。

「さっき説明したのに、なぜできないんだ」

そう思う前に、何が伝わって、何が伝わっていないのかを確かめる。本人が話しにくそうにしているなら、その理由も考えてみる。

すぐに能力や性格の問題と決めつけないことが大切でした。

注意する前に、自分の気持ちも確かめる

感情のままに注意すると、後になって「言い過ぎたな」と思うことがありました。

忙しいときや、同じミスが続いたときほど、こちらにも余裕がなくなります。仕事の問題を話しているつもりが、自分の苛立ちまで言葉に乗ってしまう。

注意する前には、次の三つを自分に確認していました。

  • 自分が見ているのは、事実か、印象か
  • 今その場で伝えるべきか、後で個別に話せるか
  • 行動を直してほしいのか、苛立ちをぶつけたいのか

最後の一つは、なかなかやっかいでした。自分では冷静なつもりでも、声や言葉に出てしまうことがあるからです。

三現主義の「現場・現物・現実」は、部下への注意にも役立ちました。

人から聞いた話だけで決めつけず、実際に何が起きたのかを確かめる。どの作業で、どこに問題があったのかを見てから話す。

事実がはっきりすると、伝える内容も具体的になります。相手を責めるような話ではなく、仕事のどこを直すかという話に戻りやすくなりました。

守るべきことは、曖昧にしない

萎縮させたくないからといって、必要な注意まで控えるわけにはいきません。

安全や品質に関わることは、とくにそうです。危険な作業をしていれば、まず止める必要があります。その場で伝えなければ間に合わないこともあります。

ただ、作業を止めることと、その人を人前で責め続けることは、分けて考えたいと思っていました。

必要な対応をした後で、落ち着いて理由を説明する。何が危険だったのか、次はどうするのかを確認する。

伝え方を柔らかくすることと、仕事の基準を下げることは別です。

「ここは守ってほしい」というところは、はっきり伝える。そのうえで、できなかった理由や、本人が困っていたことにも耳を傾ける。

この両方が必要だったと思います。

次にどうすればよいかまで、一緒に考える

実際に意識していた工夫は、特別なものではありませんでした。

できるだけ個別に話す。まず何が起きたかを確認する。そして、次にどうすればよいかを一緒に考える。

ミスの指摘だけで話が終わると、本人には「失敗した」という気持ちだけが残ってしまいます。

次に確認する場所や、相談するタイミングが分かれば、少なくとも次の一歩は見えてきます。こちらが求めていることも、伝わりやすくなります。

そのとき、本人の話を途中で止めないことも大切でした。

言い訳に聞こえる話の中にも、手順を誤解していたことや、説明不足だったことが隠れている場合があります。聞いてみなければ、こちらには分からないことです。

最後には、次に期待していることを伝える。注意をして終わりにせず、これからの仕事につながる話にしたいと思っていました。

注意した後の声かけを忘れない

とくに意識していたのは、後日、軽く様子を聞くことでした。

その後の作業はどうか。分からないところが残っていないか。注意したことが、本人の負担になりすぎていないか。

一度話したから終わりではなく、その後も見ていることを伝える。そうした声かけで、話しやすくなる部下もいました。

改善できているところがあれば、それも言葉にするようにしていました。

注意されたことだけが本人の中に残らないように、変わったところも見ていると伝えたい。うまくできたことが分かれば、次の仕事への自信にもつながると感じたからです。

管理職の言葉は、自分が思っている以上に、相手の中に残ることがあります。だからこそ、指摘する言葉だけでなく、その後にかける言葉も大切でした。

注意した後も、相談に来られる関係でいたい

叱ること自体が悪いとは思っていません。仕事をする以上、伝えなければならないことはあります。

ただ、その結果、部下が黙り込み、相談も報告もできなくなってしまう。それは避けたいと考えていました。

こちらが言いたいことを言えたかより、相手が次にどう動けるか。その様子まで見て、初めて伝わったかどうかが分かるのだと思います。

私も、いつも上手に伝えられたわけではありません。振り返れば、もう少し話を聞けばよかったと思うこともあります。

それでも、注意した後に、また相談に来てくれる。分からないことを、分からないと言ってくれる。

そんな関係を保ちながら、必要なことを伝えていく。それも、管理職の大切な仕事だったと、今は思っています。

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