現場では、機械が停止してしまった場合に、原因をどれだけ早く見つけられるか。
それが、与えられているミッションでした。
日ごろから、想定訓練のように、解決策を話し合う機会も作っていました。
ただ、いざ本当に機械が止まると、教えられていることと、自分が習得したものが少しでも違うと、動けなくなってしまう部下がいました。
考えて動けない、そんな状態をそばで見ていると、つい自分で手を出してしまう。
もちろん、少しの時間は待ちます。
でも、これ以上考えても解決策が出てこないと感じたときは、結局、自分で対応してしまっていました。
原因は、1箇所とは限りません。関連する箇所まで確認する必要があることも多いのです。
目の前の原因を探ることはもちろんですが、視野を広げて見ておくことも大切だと思っています。
そして、そこは最終的には経験がものを言う世界でした。
目の前で止まっている機械という「現実」と、それを動かしている目に見えない作動システム。この両方を、基本として頭に入れておかなければ、原因にはたどり着けません。

特に、目に見えないシステムエラーになると、どうにもならなくなって固まってしまいます。
そこで、基本的なつながりと、動作の方法から教えていくようにしていました。
現場には便利なタッチパネルがありました。問題のシステムを開き、エラーになっている箇所を見つけていきます。物理的なエラーもあるので、まずはエラーの意味を分かってもらうことが先決でした。
結局、多くの経験を積んだ人が先に上がっていく世界でした。
「任せる」と言いながら、実際には、自分が先に動いてしまっていた仕事のひとつです。
「任せられない」の正体は、実は管理者の自信じゃなかろうか
管理者向けの研修資料に、こんな指摘がありました。
自分の技能に強い自信を持っている管理者ほど、部下の能力の低さや経験の乏しさに不満を感じ、部下は自分の指示通りに動けばいいと思いがちだ、と。
これを読んだとき、正直、ドキッとしました。
「任せられない」というのは、部下の能力の問題だと思っていました。
でも、実際はそうではなかったのかもしれません。
部下を、単なる自分の補助者、あるいは道具のように見てしまっていた。
そう言われて、思い当たる節がありました。

責任を背負う不安から、任せることを避けていた
任せるということは、口で言うほど簡単ではありません。
全体的に任せるのは、それなりの責任が出てきます。
果たしてその責任を取れるのだろうかという不安が、いつも残ります。
あまりにも責任が大きすぎると感じると、自分で行う方が簡単だと感じてしまう。
これが、正直な気持ちでした。
でも、部下に任せないということは、部下が自律性や自発性を発揮する機会を失うということでもあります。
管理者が思っているほどの成果は、いつまでたっても生まれません。
チームの活性化も、期待できないままです。
任せて失敗したとき、管理者がすべきこと
任せるということは、失敗も含めて引き受けなければいけません。
私が任せるかどうかを決める目安は、シンプルでした。
「今回の故障原因は、だいたい当たりが付くか」と聞いていました。
「大丈夫です」と答えが返ってきたら、任せていました。
部下の意見を取り入れた結果、失敗することもあります。

そんなときは、本人の見解を聞き、必要であれば自省を促し、誤った点を自覚させる。
そこまでが、任せるということなのだと思います。
任せて終わりではなく、失敗したときにどう関わるか。
そこに、管理者の役割があります。
「叱る」と「怒る」の違いを、分けて考えているか
任せた仕事で失敗が起きたとき、感情的に「怒って」しまうと、部下はまた「言われた通りにしかやらない」方に戻ってしまいます。
「怒る」は、自分の感情をぶつけることです。
「叱る」は、相手のために、行動の改善を促すことです。
この違いを意識できているかどうかで、部下が次にどう動くかが変わってくるように思います。
まとめ乗り越えなくてはいけないハードル

管理職として、部下に仕事を任せていくことは、避けて通れない課題だと感じていました。
全体的に任せるのは、それなりの責任が出てきます。
果たしてその責任を自分は取れるのだろうかという不安は、最後まで残っていました。
あまりにも責任が大きすぎると感じると、自分でやってしまう方が簡単だと思ってしまっていました。
それでも、組織として人を育てていくなら、乗り越えなくてはいけないハードルでした。
任せるときには、最終的にどういう状態になればOKなのかを、先に伝えるようにしていました。
そして、作業に入る前に、故障の原因として考えられる想定を3パターンほど挙げてもらうようにしていました。
部下は、「原因はこれです」と、ひとつに決めて現場に行ってしまうことがありました。その原因が当てはまればよいのですが、外れると、違う箇所をいじりはじめて、さらなる故障が発生することがありました。
だから、ひとつに決め打ちさせず、複数の想定を持った上で動いてもらっていました。
そのために、部下に教えていくことを、真剣に考えていました。



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